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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

アルが初めて惚れた女のコは、弟:伊織の大切な想いびと……。

つい今しがた判明した事実が、俺の頭のなかにすさまじい勢いで駆けめぐる。

マコちゃんは、アルに告白を勧めた。
伊織が帰ってきてからじゃ、想いを打ちあけることさえできないと思ってのことだろうか……?

それほどまでにふたりは仲が良い?

俺がその場に立ちすくんでいると、そろそろとアルが戻ってきた。
さっき逃げたことなんておかまいなしに俺に尋ねる。

「聞いたことあるんだけど、これ、なんて曲か知ってる?」

は?
今それどころじゃねぇよ。
ピアノが鳴っていたことすら忘れてたよ。

とりあえず流れてくるメロディに耳を傾けてみる。
音楽にウトい俺には何拍子かも何長調かも、ましてタイトルなんて。

「わかんねぇ。キッチュでポップなウキウキソング?」

感じたまでを大雑把に言ってみた(失礼ですみません)。

「"キッチュ"って…まんま安っぽい表現だな」

アルはまた、壁際に腰をおろす。

「初めて会ったときもこの曲だったんだ。それで、泣いてた」

しかたなく、俺もその隣に居場所を作る。

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