
僕ら× 1st.
第5章 伊織の婚約者 --Shu
***
冬休み、一時帰国すると戻りたくなくなると言って、伊織は帰ってこなかった。
お前の花野ちゃん、アルが見つけたぞなんて言えるわけもなく、俺は、「フィアンセ元気か?」と電話口で尋ねてみた。
連絡はとっているらしく、「元気そう」と返ってきた。
明けての始業式。
正門の見える廊下で本を読みながら彼女を待っているアル。
寒いのに窓を開けて、ご苦労だな…。
彼女が通りかかったところで、見ているだけなのに。
彼女には、相手がいるとわかっているのに。
俺は、少し離れた教室内でスマホをいじりながら観察していた。
と、うしろで誰かの話し声が聞こえた。
「おい、あれ、宮石ちゃんじゃね?」
「うわっ、そうだよ。何してるんだろ?」
振りむくと、3年の教室をキョロキョロと覗きながら歩く花野ちゃんを見つけ…彼女も俺に気づいて駆け寄ってきた。
「柊先パイ、おはようございます!」
「おはよう、花野ちゃん。どうしたの?」
「あのっ、文化祭のときは、とても助かりました。ありがとうございます。これ、お礼のクッキーなんです。私が焼いたんです、受けとっていただけますか?」
と、2つ持っている小さなペーパーバックの1つを渡してくる。
それを見た、クラスメイトがひやかしの声をあげたので、彼女は可哀想なくらい恐縮しだした。
「すみませんっ。ご迷惑をおかけするつもりはなかったんですっ」
と謝ってくる。
冬休み、一時帰国すると戻りたくなくなると言って、伊織は帰ってこなかった。
お前の花野ちゃん、アルが見つけたぞなんて言えるわけもなく、俺は、「フィアンセ元気か?」と電話口で尋ねてみた。
連絡はとっているらしく、「元気そう」と返ってきた。
明けての始業式。
正門の見える廊下で本を読みながら彼女を待っているアル。
寒いのに窓を開けて、ご苦労だな…。
彼女が通りかかったところで、見ているだけなのに。
彼女には、相手がいるとわかっているのに。
俺は、少し離れた教室内でスマホをいじりながら観察していた。
と、うしろで誰かの話し声が聞こえた。
「おい、あれ、宮石ちゃんじゃね?」
「うわっ、そうだよ。何してるんだろ?」
振りむくと、3年の教室をキョロキョロと覗きながら歩く花野ちゃんを見つけ…彼女も俺に気づいて駆け寄ってきた。
「柊先パイ、おはようございます!」
「おはよう、花野ちゃん。どうしたの?」
「あのっ、文化祭のときは、とても助かりました。ありがとうございます。これ、お礼のクッキーなんです。私が焼いたんです、受けとっていただけますか?」
と、2つ持っている小さなペーパーバックの1つを渡してくる。
それを見た、クラスメイトがひやかしの声をあげたので、彼女は可哀想なくらい恐縮しだした。
「すみませんっ。ご迷惑をおかけするつもりはなかったんですっ」
と謝ってくる。
