テキストサイズ

僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

俺は野次馬に鋭い視線を向け、黙らせようとするが……。

「キミ、ピアノの宮石ちゃんだろ?こんな軟派な男、やめとけ?」

「そうだよ。こいつ、何人も女いるんだぜ?悪いこと言わないからさ、俺に乗りかえな?」

「近くで見ると、ホント可愛いねぇ」

たじっとあとずさりする花野ちゃんの前に、身体を入れる。

「このコはそんなんじゃないから、口出すなよ。蹴りあげるぞ?」

「お前ばっかズルいぞ」

「本條、1年生にまで手ぇ出す気かよ?」

「だから、違うって!もう黙れ!散れ!」

そこに、ひょこっとアルが顔を出してきた。
取りまこうとする連中から、俺が背中に隠していた花野ちゃんを見つける。

「何がズルいの?……あれ?花野ちゃん?」

「お騒がせして、すみませんでしたっ!」

彼女は俺の背後で頭をさげると、タッと走って階段をおりていった。

「あーあ、吉坂来たから逃げちゃった」

「本條の本性知って、引いちゃったんだよ」

口々に勝手なことを言ってヤツらは解散する。

アルは渋い顔で「おら、説明しろよ」と俺に迫るんだよな…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ