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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

「文化祭の礼だって言ってさ、クッキーを焼いて持ってきてくれたんだよ…。2つあったから、きっと俺とお前のぶんだ。なのに、あいつらが取りかこんだから、花野ちゃん怖がって逃げちゃったんだよ」

ムッとしているアルに丁寧に説明する。

「で、お前の背中に…へぇ、守ってたんだ?ふうん。カッコいいねぇ」

それはお門違いのヤキモチだろ…ったく、ボケッと外ばっか見てるからだ。

「お前の"お気に"にどうこうしようって俺かよ?」

「なぁ、花野ちゃんって、俺のことは吉坂先パイなのに、お前は柊先パイって名前で呼ばれるの、どして?」

「は?知らねぇよ。そんなんどうだっていいよ」

花野ちゃんの王子様は、俺じゃなくて伊織なんだから。

アルは納得できないというツラをしていたが、教師が教室に入ってきたので、ぶーたれながら自分の席に戻った。

問題はそこじゃねぇ。
あの様子だと、彼女は二度と3年の教室に来ねぇ。
あのクッキー、せっかく作ってくれたのに、今日このまま帰るわけにいかねぇってことだ。

次の休み時間に、マコちゃんにラインを送る。
『昼休みに花野ちゃんと一緒に屋上に来てほしい』と。

アルに伝えると、「会えるの?」と嬉しそうに聞いてきた。
ゲンキンなヤツだよ、ったく。

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