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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

俺が手洗い経由で教室に帰ると、ヤツは俺の席に座っていた。
それだけでわかる。
ヤツなりにうまくいったんだ。

「おかえり」

俺は自分のひとつ前の席にまたがって、ヤツの顔を覗いた。

「ただいま」

と、アルはニッと笑う。

「キスできた?」

「……もう少しレベルをさげてくれ」

と、目を閉じて眉間を手で押さえる。

そうだろうな。
わかってるんだけど。

「じゃ、デートの約束を取りつけた?」

「ふふ」

どうだ?ってドヤ顔かよ……。

「マジかよ?やるじゃね?」

これは、予想外の驚きだった。
こいつが誘えたこともだけど、花野ちゃんがOKしたことも……。
マジにマジで?

「音楽室に行ってもいいって!」

すごく嬉しそうに言うんだけど……。

「え、ホントに?」

それだけ?

俺はもっと、遊園地とか映画館とかカラオケとかを想像したけど…校内かよ?

「ああ。"雨にぬれても"も弾いてくれるって!毛布の礼もできたし」

「……よかったな」

お前が嬉しそうで、俺も何よりだよ……。

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