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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

「ああ、つきあってヤってるだろ?だからもう彼氏のとこ帰れ。これで、合格。研修終了」

「……こんなにカタいのに、やめられるの?」

うつむき気味に、か細い声を絞りだすその肩を、抱きしめてやりてぇのはヤマヤマだけど。

「やめられるさ」

「…それって、私に魅力がないってことよね」

俺にかぶさっていた彼女は、身を起こして傍に座りこむ。

「ちげぇよ。俺が本気になりそうだからだよ」

「え?」

よどんでいた表情を輝かす彼女で。
俺はその顔を見ないように、話す。

「俺には決めた人がいるから…本気の浮気はしたくねぇんだ…。彼氏と仲良くな」

「なにそれ?…ね、聞いて?私、彼氏なんて最初からいないの。柊君と…一緒にいたかったから、練習させてなんてウソついて近づいたの」

…そっか、いなかったのか……。

「それ、すっげ嬉しい。ありがとな」

俺は、軽いナンパ男。
遊びじゃない女のコとは、つきあえねぇ。

下着を身につけた俺は、彼女に服を着せていく。

「お前、いい女だよ。俺なんかじゃもったいねぇよ」

服を整えた彼女はテレビ前に走り、取りつけてあるマイクを持って戻ってくる。

「最後にカラオケしよ」

「ああ、いいよ」

歌ったあと、彼女は言う。

「柊君と映画を観にいきたかった」

俺は、彼女の頭をポンポンと軽く叩くことしかできなかった。

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