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僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

***

金曜日の午後は雨あがり。
これでしばらく会えなくなる。
今日はいつもより長居していいかな…?

「花野ちゃん、ミルクティ好き?」

「わ!ありがとうございます!大好きです!」

自分のことを言われたわけでもないのに、"大好き"という彼女のセリフに胸がじーんと震えた。

「よかった」

近くのコンビニで買ってきた缶紅茶を渡し、俺も缶コーヒーを飲み始める。
彼女は3口ほど飲んだあと、立ちあがる。

「ん、あったか~いっ!元気でました!じゃあ、お礼に一曲。んー、何にしようかな?先パイ、リクエストありますか?」

「ごめん。俺、音楽は好きだけど、わかんないんだ。花野ちゃんの好きな曲で頼むよ」

「わかりました!えーと、このミルクティってCMしてますよね。確かBGMは、"ジュ・トゥ・ヴ"」

「ジュ?フランス語?」

俺、鼻母音が苦手でフランス語はあんま身を入れてなかったんだよな…。
どういう意味だろ?と思った俺に、彼女は教えてくれた。

「はい、フランス語で"キミがほしい"」

しんみりと始まった曲は、すぐに軽快な3拍子を刻みだす。

弾き終えて、もう一度「いただきます」と俺に笑いかけ、紅茶を飲む。
可愛いなぁ。

「俺、これ知ってるよ!そんなタイトルだったんだ。ジュ?」

「"ジュ・トゥ・ヴ"です」

「ふうん、フランスではそうやって口説くのかな…」

"キミがほしい"なんて、俺の心、そのまま…。

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