テキストサイズ

僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

「相手があいつだってわかったのは、ついさっきなんだよ……。やっと、近づけたと思ったのに……。今日はいいだろ?明日から会えなくなる…来年の夏休みまでに忘れるから」

「お前、卒業してもこっちに顔出すつもりか?」

根岸はあきれたように俺を見る。

「だって、近いし」

「お前も真剣に部活動に励めよ」

うわ、教師っぽいこと言うよ。

「もう戻っていい?」

こうしているあいだにも、時間は刻一刻と進んでいく。

「悪いけど、俺は速水の本気をないがしろにしたくない。今日でもう、金輪際あきらめてくれ」

へぇ、あいつが見込んだだけのことはあるな…。
忠直な男だ。
一学期のうちに根岸を懐柔したあいつも、わかってはいたけど敵にしたくねぇな。

"あきらめてくれ"って、俺だってできるならそうしたい。
花野ちゃんのネックレスを知ってから、いつも心のすぐ横にあった気配。

「今までのことは秘密にしてやるから、だからって今日、宮石に手ぇ出すなよ?」

「出さねぇよ。…先生って最高にイイヤツだなっ」

「……お前ら兄弟、そっくりだな」

苦笑いの根岸は、先に音楽室に入っていった。

「似てねぇよ…」

誰に言うでもなく、俺は呟いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ