テキストサイズ

僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

「花野ちゃん、今日は何時に帰んの?」

柊は、雲がかかった空を見あげながら聞いてきた。

「あと1時間くらいじゃね?」

「ふうん」と言ったあと、ニッと笑って続ける。

「なぁ、今から俺も入っていいか?悪いようにはしねぇ。で、ふたりで帰れよ」

いや、お前。
今、何かいたずらなこと思いついたよな?

「邪魔になるだろ?」

「ひとりならね。接待しなきゃいけねぇだろ?」

と言いながら、柊はもうドアをノックしていた。
「はい」となかから返事が聞こえると、柊はドアを開けて入っていったので、躊躇していた俺もついていった。

ひととおりの挨拶を終え、柊は室内を見まわしながらピアノに近寄る。
もう止まれよという俺の視線に気づいて、ふっと笑う。

「今、俺らの教室使われててさ、ここにいさせて?騒いだりしねぇから」

「かまわないですよ?どうぞ」

ニコッと彼女は柊に笑いかけるから、俺は寂しくなる。
俺だけの笑顔ではないから…。

「ありがとう。花野ちゃんは気にせずピアノを弾いてね。BGM流れてたほうが俺らも休まるし」

「ありがとうございます。うるさかったら、優しくたしなめてくださいね」

「俺はいつも優しいよ。特に年下の可愛い女のコには」

こいつ、ホント女のコ扱いなれてるよな。
そんな歯が浮きそうなセリフ、よくもマジメに口にできるよ。
いつもながら感心する。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ