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僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

俺が成りゆきを見ていると、柊はピアノの脇にある棚に近づいて楽譜をパラパラとめくりだす。

彼女の瞳はしばらく柊を追っていたが、そのうち手元の楽譜に目を落とす。
そして、楽譜を持って俺のもとへパタパタと駆けてきてくれた。

「ね、吉坂先パイ!このなかで知ってるのありますか?」

俺は、柊じゃなくて俺のところに来てくれたことが嬉しくて……花野ちゃんが開いた目次を黙読しながら、口元をにやけさせた。

「映画のメインテーマを集めてあるんです」

「ああ、ホントだ………」

「これなんてどうでしょう?"ムーンリバー"」

「駅裏の店か?」

そう言ったところで、花野ちゃんの背後にいた柊がこわばった顔で首を横に振る。
ああ、まずいことを言ったのか?

そのタイトルに続く説明には映画"ティファニーで朝食を"と書いてあった。
ティファニーって貴金属店だよな?それか、女の名前。
宝石を食う女…いそうだ。

そんなことを考えていたけれど、花野ちゃんの説明はまったく違う方面だった。

「長い川を渡って、ふたりで夢を叶えようって感じのセンチな曲です。吉坂先パイと柊先パイって幼馴染みなんですよね?」

「幼馴染みというか…」

俺が口ごもると、柊がすかさずかぶせてきた。

「腐れ縁!」

一瞬後、花野ちゃんは口を手で押さえて笑いだした。

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