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僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

「もう、解放してくれ。元気でな」

ずたぼろのアル先パイが、惜しまれながらこっちに向かってくる。
シャツのボタンもすべて剥がされて、チラッとたくましい胸が見えちゃって、セクシーなんですけど!

花野はというと……いない!
あたりを見まわして探してみると、私の少しうしろのほうで…。
ほかの先パイに告白されてるじゃん!

おいっ!絶対に受けんなよっ!

ボタン、受けとんなー!

ああ、受けとったよ…先パイ、見てたよね……。

花野は深々と頭をさげて、その男を見送った。
一応、お断りしたわけね。
もう、ヒヤヒヤするよ。

と、アル先パイが私に声をかけてきた。

「マコちゃん?……ごめん、上の名前知らなくて」

「いえいえいえ。充分ですっ!先パイ、ご卒業、おめでとうございます」

名前で呼ばれたいから、あえて苗字は名乗らないでおこう。

「世話になったね。ありがとう」

儚げに笑う先パイに、何かしてあげたい気持ちが疼く。

花野を誘いだして無理矢理デートなら可能だけど、そんなの先パイは喜ばないよね。
卒業と同時に気持ちを切りかえたほうが、きっといい……。

「いいえ。先パイ、私のこと覚えててくださいね?握手してもいいですか?」

私がさしだした手を、先パイはぎゅっと握ってくれた。

「ああ、忘れないよ」

先パイと握手できた!
それだけで、充分。
私、がんばった!

ほどかれたその手を自分で握り、胸に当てた。

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