テキストサイズ

僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

アル先パイはそのまま花野のほうへ歩を進めていく。
私もそちらへ身を、そして足を少し向けた。

ほかの男から貰ったボタンを見つめる花野は、だいぶん先パイが近づいてから気づいて顔をあげる。

「吉坂先パイ…ご卒業…されちゃうんですね。寂しくなります」

何その言葉は?

「ぷっくくっ。留年、できなかったよ…」

先パイも、何その返し!

「いい天気でよかったです」

「いつでもいい天気だからな」

けっこう、いい雰囲気だよね。
先パイを笑わせるなんて。

「先パイの考えかた、大好きです」

「おっ、告白された」

え??
先パイ、そんなこと言うんだ。
花野の前では普段よりずっと解放されている感じ。

「花野ちゃん……これ、貰って」

と、花野に握った手をさしだす。

「はい」

右手を出そうとして、手のなかにボタンがあることを思いだし、慌ててボタンをポケットに入れる。
それから、受けるように手を出した。

花野の手のひらに、先パイのブレザーのボタン……。

先パイ、花野用に取っといたんだ……。

「俺の気持ち」

じっとボタンを見つめる花野。

何か言えーっ!

角度を変えては、しげしげと観察しだす。

その行動にいったい何の意味があるかはわからないけど、さっき貰ったときは、そんなことしなかったのに……。

「ありがとうございます。ご利益ありそうです」

ご利益って……。

「さっき貰ったのと見分けつく?」

ですよね!心配っ!

「大丈夫です!先パイの、ここが擦れてます!」

ああ、それを確認してたの。

「よかった……またな、妹」

「ふふ。おめでとう、お兄ちゃん」

は?

アル先パイは、花野の頭を撫でて校庭をあとにした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ