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僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

~速水伊織side~

中学2年の夏休み開始早々帰国した僕は、自転車に乗り彼女の家へ向かう。
黄色やオレンジといった元気な色の花が咲きほこる玄関先で僕を出迎えたのは、彼女と一番上の兄貴だった。

「はい、お土産。タディ(和波兄)とハン(帆澄兄)のぶんも」

「おう、覚えていたか。ありがとうな」

兄貴は俺たちはついでなのをわかっているよと言いたげに、手渡された袋のなかを覗いたあと、僕が未だ持っている彼女用の紙袋に目をやってニッと笑った。

彼女の兄2人と僕の兄2人には、おもしろそうな文具。
あれば使う連中だから、選ぶのは簡単だった。
そして、根岸顧問にも同じ物を。

「フラウには、これ。日陰に置いてね」

「わ!ありがとう!何かな?」

「開けてのお楽しみ。むこうですごく流行ってて、可愛いのあったから」

手のひらに乗るオルゴールつきのスノードーム。
森のなか、陽だまりの花畑に集まってくる小鹿やリス、ウサギたち。
ひっくり返すと雪が舞いあがり、次第に降りつもる。

「へぇ、何だろ?嬉しいな、ありがとうっ!」

「元気にしてた?」

和波兄は僕らの会話を聞きつつも、花壇で咲き終わった花を回収している。

「うん。リルも?」

「早く帰ってきたかった。やっぱ、こっちが一番。…髪、のびたね」

去年の今頃は短めのセミロングだった彼女の髪は、背中の中心に届きそうなロングヘアになっていた。

「そろそろ切ろうかと思うんだけど」

「似あってるよ」

和波兄に見送られ、彼女をうしろに乗せて近くの図書館まで自転車を走らせる。
こんなとき、いつも頭に浮かぶは、彼女と一緒に見たリバイバル映画のメロディー。

口笛を軽く吹きながら、腰にまわされた彼女の両手を感じて、幸せな気分に浸る。

やっと、帰ってこれた。
やっと、本物に会えた!夢じゃない!

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