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僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

あいかわらず口の減らない女だな。

"ショコラ"は甘めだけど、"ハニィ"ってのは愛称だよ。
カノ→ハノ→ハニィになっただけだ。

この国のヤツらは"ハニー"に聞こえるらしく、恋人を連想するようだけど、"ハニー"なんて少し親しいレベルの表現じゃないか。

指摘されるなら、花いっぱい…フラワー フィールドなイメージで呼んでいる"フラウリィ"とその短縮形の"フラウ"のほうだと思うけど、僕の編みだしたこの特別な名前は家族内かふたりきりのときにしか使わない。
真似されては特別じゃなくなってしまうから。

それはさておき、いちいち疑問を寄せられるのがうっとうしくって。
この国に来て学んだ僕は、人前ではハニィのことを本名で呼んでいる。

そのあたりズバズバ言う、または受けながす小津や根岸顧問にはあまり気を遣っちゃいないけど。

「そうだ、ハニィ。これ終わったら楽譜見に行かない?」

突然僕に声をかけられた彼女は、僕をチラッと見たあとに視線をジグザグと動かした。
何、その反応?

「いいですね。おデートですか?」

小津は、大きく丸めた紙屑の一塊を勢いよく投げてくる。
僕がかわさず頭に当てたことで怒りは収まったのか、最後の作業に取りかかる。

「いいね。マコも行こっ!」

彼女は僕を見ないで小津に笑いかける…。

「……うーん、夕方から用事があるんだ。また誘って?」

小津は、僕を見ながらニヤニヤして辞退した。

ああ、わかったよ。
この借りはいつか返すよ。

そうだな、アル兄のとっておき水着写真でもくれてやるか。
さっき、花野情報提供の礼を渡したところだけどな。

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