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僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

「わ!おいしそうだねっ!いただきます!」

サクサクと彼女はスコーンをほおばる。
つい今しがた、胃が受付を拒否しだした僕は、フォークの先でツンと塊をつつく。

「どうしたの?」

僕の変化に気づいた彼女が、心配そうな顔でまっすぐに見つめてくる。
彼女の瞳に映りこんだ僕のシルエットを、見つめ返す。
本気で僕のこと、気にかけてくれているのはわかるんだよ…でもね…。

決めた。
とりあえずこの場では態度で告ってやる。
僕の意中のコ詮索なんてしようとした罰だよ。
ちょっとは僕のこと、意識しろっての。

「シェリー(愛しいキミ)。はい、あーんして?」

ニシッと笑い、僕は手でつかんだスコーンを彼女の口元へ運ぶ。
今までにない僕の振るまいに戸惑いながらも、彼女は目の前のスコーンを素直に一噛みした。
モグモグと口を動かす。

「おいしい?」

「うんっ、とってもおいしい!」

子どもの頃から見慣れた笑顔、僕の大好きな彼女の笑顔。
僕もニコッと笑みを返し、彼女がかじったあとを自分の口に含んだ。

「あ…」

僕が噛み砕くのを、彼女が見守る。
間接キスに彼女も気づいている。
青ざめた胃に無理矢理ごくっと落としこみ、口を開く。

「んっ、おいしいね。僕も、もーらおっ」

彼女の皿からスコーンを取り、半分ほどかじる。

「んっまい!」

つぎは、僕の食べかけを彼女に向ける。

「モン プチ クール(可愛い僕のハートちゃん)、どうぞっ!」

僕の一部始終をぽけっと見ていた彼女は、ずいっと出されたスコーンに若干のけぞりつつ、僕をおずっと見る。

「ん?おいしいよ?」

僕はできる限りの優しい笑顔で、食べるよう促す。
意を決した彼女は、顔を寄せてゆっくり口を開けた。
彼女の口に入りかけたところで、僕はぐっと手を進める。

「はふっ…」

僕の指先が口内に触れ、驚いてこぼしそうになった彼女は、思わず手で口をおおう。
口に手を当てたまま、少し苦しそうに飲みこむ。

「もうっ、何するのっ?」

ちょっと困ったような咎めるような顔で、僕を見る。
僕は何食わぬそぶりで、彼女に触れた指をじっと見つめたあと、自分の唇にそっと当て彼女を見据えた。

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