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僕ら× 1st.

第1章 初期状態 --Ior,Shu

「柊、待ってたよ!」

薄暗い店内、いつもの壁際には先客あり。
と思ったら、待ちあわせの相手…キナだった。

「早ぇな、まだ15分前」

「会いたかったんだよー」

キナ前のカウンターには、飲みかけのコーヒー1杯と吸いがら4本の灰皿。
いつからいたんだ?
あーあ、つけ根まで吸いやがって…まだ未成年なのに。

「いい女は男を待たせるんだろ?」

「そんな考えかたは嫌い」

「お前が言ったんだろ?」

「今日は嫌い」

「ふっ、いいね」

気分次第で意見が変わるのは、別に嫌じゃない。
はっきり言ってくれるのなら、これほどわかりやすいことはない。

逆に変わらないほうがやりにくかったりする。
うちにいるあの頑固一徹兄弟みたいに。

「ごはんは?」

と言いながらすり寄ってくる。

「食ってきた」

「よかった」

一緒に食べたかったと言わないところが、キナのいいところ。

「私の晩ごはん、当ててみて?」

何、その挑発的な瞳は?
仕方ねぇな。

グッとキナの顎を持ちあげて、紅い唇を味わう。

「んんっ」

「……生クリーム、食ったろ」

その味は、苦いタバコと油っぽい口紅と解けあってすぐさま口内に広がった。

「ケーキをね」

2人の口にコーヒーを順に注ぎこみ、店を出る。

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