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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

彼女の身体はやわらかくて、シャンプーの香りがした。
そういえば、まだ香水を渡せてなかったな。
今年のクリスマスプレゼントにどうかな……。

ああっ、抱きしめるって、気持ちいいなぁ。
そのぬくもりに、癒されていく。

彼女はじっと動かない。
兄妹の抱擁とかって思ってんのかな。
あの兄貴たちなら、抱きしめてそうだしな…。

僕は彼女を抱きしめる腕に力を込めた。

カシャッ。
かすかな音がして振りかえると、そこには依田と依田につかみかかられているカメラ男……。

気まずそうに目をそらす依田と対称的に、色ネタ発見と目を輝かす男。

「やっぱ、速水と宮石だ」

彼女も僕の腕のなかで、そちらを見る。

「花野、行こ」

僕が彼女に顔を近づけると、左背後でシャッター音がした。

赤くなっている彼女の手を引いて、ドアへ向かう。

「いいカメラだね。よく撮れた?」

「もっかいキスしてくんない?」

「してないよ?」

「またまたぁ」

「じゃね」

「速水、お前らどこまでいってんの?いつから?」

僕はニッと笑って見せ、彼女を先に進ませてドアを閉めた。

あいつは新聞部なのか?
そりゃいい。
彼女には僕がいるって校内に報じてくれれば、僕らは公認になる。

問題は根岸顧問だ。
音楽室、使用禁止になるかな……?
なったらなったで、もう2年生だし部活動は必須じゃないだろ……。
彼女との演奏は楽しかったけど、これからはデートしてやる。

僕はこの偶然に乗っかかるシナリオを組みだしていた。

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