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僕ら× 1st.

第1章 初期状態 --Ior,Shu

イッた後のキナを撫でながら、さて、どうしよっかな?と思案していたら、向こうから飛びこんできた。

軽いポップスの着信音が聞こえる。
よし、引きのばした甲斐があった!

「…早く出なよ」

俺は悔しそうにうつむいて二番目の男を演じ、スマホから聞こえてくる男の声に耳を澄ます。

「今どこ?」

「うん、家だよ」

「これから会えない?」

「え?今から?今日は親が帰ってきてるんだ」

少し顔をあげて、ウソをついているときの顔をじっと見つめる。

「俺、明後日から海外出張なんだわ」

「えええっ、そんな突然?」

大袈裟に驚いている肩をつついて、ただ今ペンを走らせた紙切れを見せる。
それを見て、キナはいたずらっぽく俺に了解の微笑みを見せた。

「誰と行くの?女もいるの?」

「男ばっかりの4人だよ。そんな心配ならついて来いよ?」

「嫌よ。婚前外泊はしない主義なの」

スマホ片手で寝そべるキナに上半身をかぶせるようにして、さらにメモに書きこむ。

「ね、向こうって何が有名なの?」

「そりゃ、ガレットと、一面銀世界のキレイな場所だよ」

「寒そう…」

「温泉もあるよ」

ウィンタースポーツの聖地ね、パウダースノー、いいな!

「うーん。何時に出発?」

「朝5時過ぎ」

「うわっ、早っ!いつまで?」

かぶさった姿勢のまま、布団に押しつけられた胸を触る。
脇から膨らみをそろそろと撫でていると、キナが身体を少し起こした。

「商談成立までだよ。ビザもとったし」

「難しいの?」

「うん。ヤツらの考えは、質より値段だからな」

費用対効果だと俺は思うぞ?
年に1~2回も使わない高機能をつけられてもな……。
そんなガラクタより、アルの作品のほうが実用的。

と考えながら、キナの乳首を指で転がす。
突然に強くつまみ、もう片方の指でメモにある質問を指す。

「ねぇンっ、いくらの取引なの?」

「950。これは門外不出だぞ?」

9500万ね、了解!

「950円?安いのね」

「なのにもっと負けろとか、特典つけろとかうるさくてね」

「つけないの?」

「つけると見せかけて抜け穴をくぐるのが、ウチの社長のやり方なんだ」

だよな、あの社長なら。
ウチのブレーンのシナリオ通りだよ。

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