
僕ら× 1st.
第1章 初期状態 --Ior,Shu
***
俺:本條柊の仕事は、アルの親父が総帥を務める系列の雑用や諜報の一部。
この家に来てから2年が経とうとしている伊織にも、カタい方面はそろそろ紹介しておこうと思って声をかけた。
「よし、じゃ行くか」
リビングでのいつもの夕食後、彼女たちへの連絡を一通り終えた俺は、スマホをポケットに入れて立ちあがる。
「いってらっしゃー」
何かの回路と向きあっていたアルは、ちらっと俺らに目をやって見送った。
風呂に入ったあとだというのに、右頬や顎に油のすじがついている。
今日は一体何を作っているのか。
尋ねても専門用語で返されては、たまったものではないので、俺は伊織と静かにリビングをあとにした。
21時半、小脇に本を抱え、少し気だるそうな伊織を連れて、俺は仕事場に向かった。
仕事場といっても、先程くつろいでいたリビングと同じ屋敷内。
ここは、吉坂邸…またの名を"T"。
隠し家の通路奥にそびえる俺たちの実家だ。
この家には、総帥、その息子のアルと伊織、俺の父親と俺、参謀小柴、他に10数名の役員たちが暮らしている。
まさに男所帯だが、個性的ななかにも礼儀をわきまえた連中ばかりなので、敷地内は比較的静かだ。
階段を降り、1番奥から2番目のドアを虹彩認証で開ける。
認証と同時に部屋の明かりがつき、PC画面起動、そこかしこで読みこみが始まる。
まわりを見まわしている伊織に、正面デスク前の椅子を勧めた。
壁際の小さな冷蔵庫から缶コーヒーを2本出し、1本を伊織へ投げ渡す。
危なげなく受け取った伊織は、礼を述べて早速ゴキュっと飲みだした。
伊織から右側のデスクに腰をもたせて、俺もひとくち。
俺:本條柊の仕事は、アルの親父が総帥を務める系列の雑用や諜報の一部。
この家に来てから2年が経とうとしている伊織にも、カタい方面はそろそろ紹介しておこうと思って声をかけた。
「よし、じゃ行くか」
リビングでのいつもの夕食後、彼女たちへの連絡を一通り終えた俺は、スマホをポケットに入れて立ちあがる。
「いってらっしゃー」
何かの回路と向きあっていたアルは、ちらっと俺らに目をやって見送った。
風呂に入ったあとだというのに、右頬や顎に油のすじがついている。
今日は一体何を作っているのか。
尋ねても専門用語で返されては、たまったものではないので、俺は伊織と静かにリビングをあとにした。
21時半、小脇に本を抱え、少し気だるそうな伊織を連れて、俺は仕事場に向かった。
仕事場といっても、先程くつろいでいたリビングと同じ屋敷内。
ここは、吉坂邸…またの名を"T"。
隠し家の通路奥にそびえる俺たちの実家だ。
この家には、総帥、その息子のアルと伊織、俺の父親と俺、参謀小柴、他に10数名の役員たちが暮らしている。
まさに男所帯だが、個性的ななかにも礼儀をわきまえた連中ばかりなので、敷地内は比較的静かだ。
階段を降り、1番奥から2番目のドアを虹彩認証で開ける。
認証と同時に部屋の明かりがつき、PC画面起動、そこかしこで読みこみが始まる。
まわりを見まわしている伊織に、正面デスク前の椅子を勧めた。
壁際の小さな冷蔵庫から缶コーヒーを2本出し、1本を伊織へ投げ渡す。
危なげなく受け取った伊織は、礼を述べて早速ゴキュっと飲みだした。
伊織から右側のデスクに腰をもたせて、俺もひとくち。
