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僕ら× 1st.

第1章 初期状態 --Ior,Shu

マウスを操作して管理画面を見せる。

「ターゲットらをウェブ上に誘いこんでSNSやショップから情報を引きだすんだ」

「柊兄とアル兄の2人で?」

伊織は、人名リストが並んだ画面を真剣な面持ちで見つめる。

「いや。大輔もサブでみてくれてる」

大輔というのは、俺の初めての舎弟。
気のいい真面目なヤツで、昼間ここで働いて、夜学に通っている。

「もしかして、こないだのK社最新機器情報の入手も?」

「まあ、そうだ。
開発者がSNSに不満を書き散らしてくれたからな。
個人が特定できれば、芋づる式にデータが出てくるし。アルはすげぇよ」

「SNSに誘導したのは柊兄でしょ?すごいじゃないか。昨日もお見事だったけど、柊兄は爪を隠すタイプだね」

そんなことを言ってるが、こいつこそ研ぎすました爪を何本も隠している。

勘がよくて頭の回転がいい伊織は、1を聞いて9.5を知る感じ。
残りの0.5は、ほぼノーミスの優秀な人間らしいチャームポイント。

それに加えて伊織はいわゆるKYの逆、読みすぎる男だったりする。
他人の仕草や視線、言葉尻などを敏感にとらえて、心を読む。

本人曰く、丈夫な螺旋状の針金をズズズッと相手の奥深くから引きぬくイメージらしい。
その目に見えない針金には赤黒い肉塊がこびりついているので、スプラッタを苦手とする伊織は気持ち悪いと言うが、俺にしてみればその発想自体が気持ち悪ぃ。

とにかく、理解力が良くて空気を読める伊織は、仕事を任せやすいってこと。

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