テキストサイズ

僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

そしてアル兄、いるんだね好きな女のコ。
僕からはもう、その話題を出すことはないだろうけど。

「…柊兄の彼女、何とかならないの?」

ずっと病室で、目も開かない彼女。

「やられてんのは脳だからな……」

「同じ人格を作るのは無理?アル兄、アンドロイドとか作りたいって言ってただろ?」

さっき見たことは勘づかれないように、過去の会話から情報を引きだす。

「…似せることはできても、僅かなズレが失望につながるんだよ」

今、そのズレを埋めようと取り組み中なの?
花野のピアノを再現しようとしてるんだよね?

それにしても意外だな。
前に柊兄の部屋からこっそりディスクを持ちだして一緒に見たときは、"おっさん、キモ。ねぇちゃん、スゲっ"くらいしか言わなかったアル兄が、そんな感想を持つなんてな。

兄貴も花野の夢を見たりするのかな…?

「っぐ……!」

突然変な声を出したアル兄をふと見ると、顔をしかめて何かを探している。
ん?と視界に入った画面はクリスマスコスプレに身を包んだ髪の長い女のシーン…。

瞬時にはリモコンを見つけられなかったアル兄が、ブチッと電源を直接切った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ