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僕ら× 1st.

第9章 トリオ --Shu,Ior

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年度末、午後に降った淡雪は痕跡を残さず、そろそろ薄手のコートを準備しなきゃなと感じる夜。
追いコン顔出し後に遅れて入ったリビングは、ほんわかくつろぎムードだった。

まず、片隅のコタツに寝転んで本をめくっている伊織と目があう。
ヤツの前には分厚い辞書…辞書って読むものなの?

「イオが淹れる茶はうめぇなぁ」

ジャージのアルは、そのコタツに背を丸めて入っている。

「それ、ジンジャーエールだからね」

身体を起こしながら、伊織は中身を暴露した。

茶じゃなくて、炭酸なのか?

「だってお前、こんな土のゴツゴツしたコップで飲まされたら、すべてが茶に変換されるだろ」

わかる気がするよ。
何でまたそんな湯呑みに注いだんだ?
どうでもいいけど。

「見た目って予想以上に大切だよね」

そんなアルを見て、うんうんとうなずいている。

「実験しなくてもわかるし!お前、俺で試すなよ!」

俺も湯飲みに、入った炭酸に興味がわき、アルのコップに手を伸ばす。

「どれ?…くっ、もう口触りから茶だろ!」

わかっていても馴染めない。

「ひでぇんだよ?こいつ。"季節外れに八十八夜"とかわけのわかんねぇこと歌いながら俺の前にこれ置いたんだぞ?」

「俺、吹きそうなった」とアルは愚痴る。

ははは、いつものバカ兄弟完全復活なんだな。
めでたいじゃないか。

アルが1人で、からまわってただけだけど。

さすが、"プチ参謀"伊織だな。

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