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僕ら× 1st.

第9章 トリオ --Shu,Ior

~速水伊織side~

同好会を結成して3年目の春。
僕たちも中学3年生に進級した。
交際の噂がある花野と僕はやっぱり別クラス。

初日の音楽室で顧問が語りだす。

「お前らのデュオもいいんだけど、ヴォーカルほしくね?」

本日のデザートは1個500円の焼きプリン。
結婚する気ないのかな?
独身貴族っていっても、教え子に頻回に差し入れって…。
金銭感覚ヤバイな。

「発表するわけでもないし、このままでいいよ」

僕が軽くあしらった横で…。

「ヴォーカルかぁ」

プリンがおいしいのと、ヴォーカルが魅力的なのと相まった顔で嬉しそうに言う。

「速水、そう睨むな」

せっかくの僕ら2人の時間を…学年主任にでも口酸っぱく言われたか。

「先生、アテあんの?」

「おう、高2でうまいの編入してきたんだよ」

高2って、また遠いとこから…。

「女のコですか?」

「そうだ」

男よりはいいけどね。

「やた!」

花野がぐっと右手を握ったので、次いで顧問は俺を窺う。

「速水は?」

「連れてきたら?」

花野が嬉しそうならそれで仕方ない。

「ああ、来週会わせるよ」

よかったな。
計算通りにコトが運んで。

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