テキストサイズ

僕ら× 1st.

第9章 トリオ --Shu,Ior

「やめとけ。そいつはきっとお前の弟だ」

そう言われて彼女の手はピクッと止まった。

「弟?そんなのいませんよ?」

父親がとうに亡くなったと思ってるなら、そうだよな。

「本條柊。それがこいつの名前。本條彰何とかの息子だ」

いずれわかることだけど、ここでバラしてよかったのか?
暴露したなら、お前がシなきゃなんねぇんだぞ?
途中まででも俺が、そして放出はお前のと思っていたけど。

「弟?信じられないけど。……じゃあ、あなたは誰?」

千夏さんは俺から手を離して、アルを見る。

「こいつの父方の従兄」

「じゃあ私の従弟ですね?ならいけますよね?」

今夜の標的にされて、もともと虫の居所が良くもなかったアルは本心をさらけ出す。

「そうなるな。だからってお前とヤる気全くねぇけどよ。俺の趣味じゃねぇし」

「は?人が食い下がっていれば!私だってあんたとヤるくらいなら、弟を選ぶわ!」

…気、短ぇ。
こんなんだったら諜報までは難しくね?

"食い下がっていれば"って、千夏さんの都合なのに。

売り言葉に買い言葉の千夏さんに構わず、アルは別の手段を考え始める。

「大輔いる?精子さえ泳いでたらいいんだろ?」

「そうだろうけど、親父と出掛けたよ。最悪、お前のを注射器で押し込んどく?」

「やなこった。キモっ」

「それ、私の台詞でしょお?」

ため息の俺は、この邸内にひっそりと残るご意見番について問う。

「伊織ならどうすると思う?」

「聞いてみるか…」

だけど伊織は部屋にいなくて、俺たちは仕方なく予想されるヤツの行き先…益川の元に向かってみた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ