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僕ら× 1st.

第9章 トリオ --Shu,Ior

「そんなことで俺らのとこに来る?」

事情を聞いた益川は、ややあきれた声で俺たち3人を見回す。

だって、伊織がここにいるから。

益川は、小柴の部下で伊織の上司に当たる。
ブレーンの中堅。

近寄りがたいオーラを持つこの男が、雑談なるものをしているのを俺は見たことがねぇ。
トップの小柴といい、ブレーン連中は伊織を除けば不気味なヤツばかりだ。

今はまだ可愛らしさのある伊織も、そのうちこいつらに染まるんだろうか……。

「伊織は…ヤる気ねぇよな?」

とりあえず聞いてみるけど、伊織は黙々、カタカタとPCを触っていた。

「イオと俺はダメ。女なら誰だっていいわけじゃねぇ」

伊織に浮気をさせたくねぇ気持ちはわかるけど、アルのそのひとこと、余計だろ。

「本條は、強情アルがヤれるとは思っちゃいないさ。弟とナマ、そんな危険を犯してもここに所属できるか?と本條はそのコを試してるんだ。ふざけてんだよ」

俺たち同様突っ立っている、千夏さんを刺すように益川は見る。

「だから、益川さん。今夜ヤって?」

独身男には願ってもない話だろ?
しかもこんな若い女。

顔だって美人じゃないけど、そこそこ可愛い。
男を油断させる可愛さ、とでもいおうか。
スタイルだって、ややぽちゃで胸もある。
あ、俺の姉貴だった…。

切羽詰まる千夏さんも、こわばりながらニコッと愛想を振り撒く。
なのに益川は表情ひとつ変えない鉄面皮。

「明日、検査する医者って北迫だろ?これにどっちかの入れて渡せよ。話しはつけておいてやるから。で、女、誰にも見られないように医者に渡せ。そして、気が向いたら抱かせてやれ?」

そう言って益川は、短い試験管のようなプラスチックの容器を放り投げてきた。

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