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僕ら× 1st.

第9章 トリオ --Shu,Ior

気が向いたらって、気を向けろってことだろ?
彩華さんを放置したあの医者もどきに。

でも、そこを通過しなきゃ千夏さんの家族だけじゃなく千夏さん本人もきっと…。

背に腹は変えられねぇか。
千夏さん、あのジイサンとできるかな?

「北迫を丸め込めるなら、俺らの提出しなくてよくね?」

試験管をクルクルと指先で回すアルは、素朴な疑問を投げ掛ける。

すると益川は、「伊織、交代」と言って、脇の紙束をめくり始めた。

と、ふぅっと息を吐いた伊織が顔を上げる。

「はじめまして。俺、速水伊織。宝瓶宮のA型。彼女います」

そこからかよ!
占いなんて信じてねぇくせに!
アルと俺は小さく肩を揺らした。

緊張の面持ちだった千夏さんも「いるんなら仕方ないわね」と、くすっと笑う。

「はじめまして。本條千夏、天秤宮のO型よ?」

「へぇ、夏生まれじゃないんだね」

「そうなの。普通に考えたら千秋だよね」

「いいじゃない?秋に過ぎ去りし夏を思うって」

これが目的だったか。
やや和んだところで、伊織がニシッと放つ。

「北迫さんはオントシ72だからね。活動レベルも数も違うでしょ?それは本條さんもわかるくらいに。もし、同じだったら非常にヤバイけど」

言ってくれるよ、青二百才が。

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