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僕ら× 1st.

第9章 トリオ --Shu,Ior

結局俺か、と空の試験管を見つめる。

ここに入れる?
そして調べる?

異常アリって言われたりして。

とにかく他の男の目に触れないように運んでほしい。
特にこの男、アル。

「お前の何匹いるかなぁ?」

危惧したそばから、こいつは!

「100那由他さ」

"那由他"がどんな数字かもわからないのに、思いつきでそう言うと、姉は笑う。

俺が遅咲きのむず痒い羞恥心にかられていると、ドアが開いて伊織が顔を覗かせた。

「お疲れさま。……えと、頑張ってね」

そのままドアを閉めようとするので、呼び止める。

「おい!お前の部屋、今夜千夏さんに貸してやってよ。お前、俺んとこで寝ろ」

一呼吸ののち、部屋に入ってきた伊織は首を横に振る。

「悪いんだけど俺、明日から修学旅行なんだ。今夜は馴染みのベッドで寝たい。それに……」

明日から?
そうだったか。

「ああ、わかったよ。彼女以外の女を自分のベッドにあげたくないよな」

聞いてみただけだよ。

「ははっ。この家には結婚しねぇ限り連れ込むなよ?本條らに見つかると盗られっから」

伊織に軽く忠告する優しいアルに対して、千夏さんが言う。

「あんたはいないんでしょ?顔だけだもん」

最初は敬語だった千夏さんも、アルにはトゲをつけだす。

「だから何だよ?俺の部屋には入れてやんねぇよ」

頼まれたってお前の部屋は……最近のアル部屋は、何か妙ちきりんな機械が何個も鎖でぶら下がってる。
試作中の部品だとかで、寝ながらアイデアが浮かんだときに作業するだとか何とか言ってるけど、寝るときゃ寝ろよって思う。

とにかく落ち着かねぇ。
夜中に目を覚ますと、闇に浮かんだあのガラクタが意思を持った何かに見えてくるんだ。

あんな不気味な部屋で眠れるのは、度を越えた変人くれぇだ。

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