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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

次の日の休み時間、僕と依田が自由行動時のルートを机に広げて探していると、小津が付箋のいっぱいついた本をドサッと上から落とした。

「速水。これ、よろしくね。苦労して調べたのよ」

小津の持ち込んだ本の束を凝視して動かないでいると、かわりに依田が喋る。

「何だよこれ」

「周りたいとこリスト。うまく調整してね」

さらっと小津は言う。

「俺らも行きたいとこあんだよ」

小津は依田には、さほど食ってかからない。
…これからはできるだけ依田を窓口にしよう。

なのにわざわざ僕の名前をつけて話してくる。

「ショコラちゃんをエスコートすると思って頑張ってよね。伊織君」

「名前で呼ぶな…」

ようやく僕が口を開くと、依田が「くっ」と笑った。
"伊織君"と呼んでいいのは、花野だけ。
この他人からしたらどうでもいいマイルールがバレたな。

「じゃ、私はあなたのショコラに会いに行くから、あとよろしく」

と、僕の肩を2回叩いて出て行った。

花野にじゃなくて、花野と同じクラスの彼氏に会いに行くんだろ?

「小津、恐ろしいな」

こいつには味方になってもらいたいから、肩に残る小津の手の跡を払いながら嘆く。

「自由行動が一番の制限。俺、逃亡するかも」

「っ…その時は俺もヨロシク」

小津本をパラッとめくりながら、依田を窺う。

「……竹崎は?同じサッカー部だろ?」

竹崎由奈、小津のペア女子…。
授業中も、依田を見ていることがある……。

「ああ」

「進展させたい?現状維持?」

当人だって、あのあからさまな好意に気づかないわけない。

「維持あるいは、撤退…余計なことすんなよ?」

撤退?ふうん。

「了解」

そう言って、小津リストをチェックし始める。
小津はミュージアムに行きたいの?意外だな。
彼氏滝沢の趣味か?

花野と行けるなら、あの水族館は絶対ルートに組み込んでやる。
"アザラシを膝枕できるの!"と、昨日の帰り道で目を輝かせていたから。

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