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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

***

6月初め、修学旅行が始まった。

1日目夜。
花野と今日の出来事をラインで交換しあう。

『プレセペ星団、綺麗だったねー』

今日、クラス毎に見に行ったプラネタリウムは蟹座の神話紹介。
ヘラクレスに踏み潰された友だち思いの蟹カルキノス。

『また一緒に望遠鏡で見ような』

大神ゼウスが夫ある女性をたぶらかして、儲けた子…ヘラクレスは、ゼウスの正妻ヘラから疎まれ、錯乱させられて自分の妻子を殺めてしまう。

『今年も夏休みになったら、うちに泊まりにきてね?お兄ちゃんが帰ってくるから!』

落ち込んだヘラクレスは神託を仰ぎ、12の試練のひとつ…海蛇ヒドラに挑む。
その海蛇が退治されそうになり、助けようとした蟹(諸説あります)。
でも力の差は歴然で…。

『いいなー。ペルセウス座流星群ももうすぐだし。今日も大きいのが来てたみたいなんだけどね…おひつじ座流星群ってやつ』

憐れに思ったヘラに、星座としてあげられた海蛇と蟹はもう離れることはない……。

『え?じゃあ、今見られるの?』

立ち上がって窓の外を見ると、たくさんある四角に光る星のひとつに影が動いた。
カーテンが端に退けられ、開かない窓に手のひらが張りつく。

あ、花野見っけ。

逆光でわからないけど、きっと今、花野と目があっている。

『おひつじ座流星群が接近するのは昼間だから見えないよ?』

花野が僕に向かって手を振ったので、僕はキスを投げた手で振り返す。
向こうからはそんな細かい動作なんて見えないだろうけどね。

その時、花野の影が振り向き、また僕を見て大きく手を振った後、カーテンが締まった。
見回り教師でも来たか…。

僕の後ろでは聞こえよがしに好奇心を放つ男ども。
僕が花野との関係を否定すると。

「ウソつけ。お前らそろそろ1年だろ」

そう言われてもな。

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