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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

~依田晄志side~

6月初め、修学旅行が始まった。
往路は大量のお菓子を消費しながら、トランプなどのゲームに励む。

大きな寺院をまわって、プラネタリウムという文化的な一日の締めくくり。

俺たちの男子部屋は、その余韻に浸るはずもなく。
いつの間にか下ネタが始まったその部屋で、速水は黙ってスマホをいじっている。

彼女とラインしてるのかな?
口の端が上がっているし。

「竹崎って、おっぱいでかくていいよなぁ。挟まれてぇ」

「俺は顔で選ぶ。胸なんて、余程のペチャじゃなきゃいい」

「その点、宮石ってサイコーじゃね?それなりにあるし」

彼女の名前を出されて、そちらを鋭く一瞥する速水。

「俺、宮石とシたことある」

速水のスマホを打つ指が止まり、次第に拳を作る。

「あ、俺も昨日!」

眉間にシワを寄せながらもため息で消化し、再びスマホを触り始めた。

「…速水、怒らないの?」

ヤツらを睨みもしない速水を不思議に思って、尋ねてみると。

「幻想に怒ってもな」

やれやれと肩を落とす。
と、いきなり立ち上がって窓に寄った。

ひとつの方向を向いて……唇に当てた手を振る。
もしかしなくても、お前の視線の先に宮石がいるんだな。

ヤツらはそんな速水に聞こえるように囃している。

「いいなぁ、速水。宮石とガチでヤれるんだもん」

「な、宮石って、どんな風に乱れるの?」

そりゃ、俺も興味がないって言えばウソだけど。

速水はカーテンを閉めて、幸せそうな顔で戻ってくる。

「俺、シてないよ?」

"シてない"?
ま、そう言うのが一番か?
でも、誰も信じるわけがない。

「ウソつけ。お前らそろそろつきあって1年だろ。学校の屋上でもヤったことある?」

「それより音楽室だろ?宮石と速水だけの密室部活動だぜ?」

だよな。
その横で、悪ぶった2人が演じだす。

「花野っ!俺もうイキそ…」

「伊織君っ、私もイッちゃうーっ」

「あほか。どさくさに紛れて、呼び捨てにすな」

速水は横にあったエロ本を丸めて、彼女を呼んだ男の頭をバコンと叩いた。

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