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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

露天につかり、星を見上げる。
湯けむりの中で傾きだした春の大曲線がうっすらと見える。

「速水も星、好きなのか?」

「お前も?」

あのあたりにヘラクレスがいるはずだな…。

「いや、俺じゃなくて、宮石が1年の時に天文部に入ろうかなとか言ってたから」

「ああ、言ってたな。サッカー部のマネージャーかで迷ってたよ」

あのまま2人してサッカー部に入っていたら、僕は留学どころじゃなかったな。

「へぇ。宮石、考えてくれてたんだ」

「お前が誘ったの?」

クラス名簿を見て、そうだとは思っていたけど。

「竹崎とね」

「そか。あれはお前らの仕業か」

依田は花野に出会って即、気に入ったってわけだな。

「それで阻止するために、宮石と2人で過ごせるサークル作ったんだ?」

「当たり。もう2人じゃなくなったけどね」

あの写真が出回らなければ、今も2人で活動できていたかもしれないな。
どんなことに対しても、プラス面とマイナス面が存在するのを忘れないようにしなくちゃ。
"智者の慮は必ず利害にまじう"だ。

「他で2人きりになればいいだろ?」

「そんな都合のいい場所、そうないよ」

依田は訝しげな目で僕を見た。
こいつも僕と花野が親密な関係って思っているんだろな。

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