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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

~速水伊織side~

温泉の帰り道、教師に見つからないかなぁとのんびり歩きまわり、辿り着いた中庭のベンチに2人で座る。

5階の右から2番目、花野がいる部屋の明かりを眺める。
不思議とその部屋だけ温度や照度が高く感じられる。

僕と同じく、部屋に帰りたくなさげな依田が進路について尋ねてきた。
こいつは医者志望なのか。

医者…僕も考えなかったわけではない。
不純な動機だけどな。

花野を他の男に診せたくなくて……。

「俺は経済と経営、薬学は趣味」というと、依田は「残念」と苦笑した。

その後、「もう泣かせんなよ?」と、少し言い難そうに咎められる。

あの場面を見てたのか。
お前、いつからあの屋上にいたんだよ?

僕は、ことの成り行きを話してやった。

笑いを噛み殺しながら「お前が宮石の弟?」と、僕に共感してくれる。

それで親しみが湧いたのか、「伊織」と呼ばれて少し驚いたが、敬意を込めて「晄志」と返した。

僕たちはみんなが寝静まってから、お互い布団に潜った。
明日が楽しみだね。おやすみ、モナンジュ(僕の天使)……。

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