テキストサイズ

僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

~依田晄志side~

自由行動が始まる2日目。
大食堂での朝食の帰りに、担任根岸が声をかけてきた。

「速水、依田!荷物持って来い!」

俺と伊織は顔を見合わせて「やっちゃった?」と無言で交わした。
急いで鞄を部屋に取りに行く。
根岸監視の下、こそこそっと話し合う。

「強制送還?」

「おかしいな。それなら現行犯じゃないか?」

「成程」

「行くぞ」

と根岸が促すと伊織が尋ねた。

「どこに?」

「俺の部屋だ」

さっぱり読めないので、とりあえず従った。

部屋に着くと、根岸の質問攻めに会う。

「お前ら、昨夜どこか行ってた?」

「2人で温泉に入って、中庭で涼んでました」

正直に話す。
それ程悪いことはしていないはずだ。

「お前ら2人だけで行動したってことだな?他には誰もいないな?」

「はい」

「荷物を点検させてもらうぞ?」

と、有無を言わさず伊織の鞄を開けて中身を出し始める。

「何してんの?殺人事件でもあった?」

伊織は根岸の手つきを見ながらのんびり尋ねる。

パトカーや救急車のサイレンは聞こえなかったけどな。

根岸は着替えのポケットまで覗いている。
一体何を探しているんだ?

そんな根岸をまじっと見ながら、伊織はにこやかに話す。

「薬はやってないよ?」

薬ってお前……。

見つからなかったようで、根岸は手を伊織に向けて「財布」と言った。

伊織が渡すと、中身を念入りに点検しだす。

「お前、金持ってるな…」

「何を探してるの?」

「……後で話す。次、依田」

俺の荷物も伊織同様の扱いを受けた。

調べ終わった根岸は「白か」と呟く。

人の荷物を掻き回しやがって、何だってんだ?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ