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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

宿泊したホテルから、伊織、小津、竹崎、俺の4人で貸切タクシーに乗る。
ミュージアムの駐車場に着き、宮石のいるF組の到着を待つ。

その間、伊織はこれからのルートを確認しながら小津に気のない返事を返す。

「ほーんと、アル先パイってカッコいいよね。速水も見習いなよ」

「はい、わかりました」

吉坂ファンの小津は、さっきからずっとこの調子。
こんなこと、自分の彼氏に言えばいいのに。

「身のこなしもソツなくてさ、誰かさんとは大違い」

「ごもっともにございます」

「小津、いい加減にしろよ」

暇つぶしに伊織を苛めすぎじゃないか?

「さっきの話だけど、卒業式なんて凄かったんだから。柊先パイも」

「あー、だいたい想像がつきまする」

"つきまする"って、伊織、誰?

「アル先パイのボタン、誰が持ってるでしょうか?」

「上は全部むしられたんでございましょ?」

「先パイはね、一番大切なボタンを取って置いて、ある女のコに渡したの。わかる?わざわざそのコのために取って置いたんだよ?」

そんな2回も言わなくても…。
ということは、あいつ、告白したのか?

「……そか」

あ、戻った?

「ボタンが取れて乱れた服がまた、卒倒ものだったんだから」

伊織は、駐車場に入ってきたタクシーをじっと見る。

「あんなことされたら、女子は胸キュン必至だよね。……何とか言ったら?」

伊織の顔つきは、吉坂の相手が誰かを知っている風だった。
では、どう返す?

「じゃ、俺もボタン取っとこ」

あ、それ名案だな。

「あんたは1人にしかモテないじゃん」

「充分です」

そうだよな。
本命以外に大モテの吉坂より、大本命のみに好かれている伊織の方が、何万倍も羨ましいよ。

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