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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

タクシーから宮石と滝沢が出てきてにこやかに挨拶する。
伊織は早速、宮石に駆け寄る。
滝沢は小津に。

あー、朝っぱらから暑苦しい。

「あれ?あと2人は?」

人数が足らなくて、俺が発車しかけているタクシーの客席に首を伸ばすと、滝沢が教えてくれた。

「あいつら帰されたから」

「え?熱でも出た?」

あとの2人:橋岡と三倉は今年度から始まった恋人同士で、俺も部活帰りに手を繋いで歩いている2人を時々見かけていた。

「いや、ヤったのがバレて」

「えええーっ!」

「せっかくの旅行なのに、教師も気が利かないわね」

竹崎、そんな感想なのか……。

気を取り直して6人でミュージアムに入る。
2か月前にできたばかりのそこは、窓が大きくて、室内からも空がよく見えた。

滝沢が建物をカメラにおさめはじめる。
建築家志望だそうだ。

伊織と宮石は、ガラス張りのバードウォッチングルームにしばらくペタンと座り込んでいたが、鳥がやってくる気配がないと諦めて出て来た。

2人で、何を喋っていたんだろな……。

「まだ未練あり?」

そんな俺の視線を読んで、竹崎が話しかけてくる。

「いや。今はどっちかというと、伊織を観察してる」

2人は地層の展示コーナーで、石を触って喋りあっている。
伊織が身振り手振りで何かを説明していて、宮石はそれを楽しそうに聞き入っている。
あんな関係に、俺もなりたかったな…。

「男に目覚めたのか…私がいるのに」

「違うけど。私もいないから」

はっきりと断っておかないと、この荒女に引きずり込まれてしまいそう。

ここでするのは、こんな会話じゃなくてさ…。

「そうか。速水の技を盗んで、花ちゃんに再アタック?」

「しないって。第2の速水になったところで勝てっこないじゃんか」

「ああ。第2の花ちゃんを探すわけね」

そこにこだわるなよな。

まだ2人は石の前で…。
と、伊織が宮石の肩に手を軽く添えて、誘導する。

次はどこへ、行くんだろうか…。

と、横を歩いていた竹崎は何かを見つけた様で、小津に声をかけながら俺から離れていく。

「わ!何あれっ!ちょっと、マコ!」

騒がしいなぁ。
だけど、よかった、1人になれて。

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