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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

ミュージアムから近い店で早めの昼食。
明るい店内に、宮石が控え目に歌う声……。
「イチゴの兄さん、仕事に行くよー」と両手指を動かす。

「何で花ちゃん、子どもと遊んでんの?」

パウダールームから戻ってきた竹崎は、キッズスペースで幼児と遊ぶ宮石を、ぎょっと見つめる。

「さっき、あの男の子がやって来て、花野を引っ張って行っちゃったのよ」

「あのコの親は?」

「あそこ」

小津がその親を躊躇なく指差す。

「スマホしてるじゃん!何?花ちゃんに押しつけてるの!」

だよな。
宮石は楽しそうだけどさ。

「花野、来たぞ」

プレートが運ばれだし、伊織が宮石に声をかける。

「あ、はーい!じゃ、トーマ君。遊んでくれてありがとうっ」

ハイタッチしてトーマ君と別れ、席につく。

「花ちゃん、修学旅行なのに子守させられて…」

伊織もきっとそう思ってる…。
俺もだけど。

あの親、宮石が相手をさせられているってわかっているくせに、そ知らぬふりだ。

伊織の隣の席に戻ってきた宮石は、ストンと座っておしぼりで手を拭きだす。

「うん、可愛いよね。今はバナナ鬼が流行ってるんだって」

バナナワニじゃなくて?

「何それ?感染症?」

と尋ねる伊織にかぶせて竹崎が言うことには。

「速水のバナナって皮剥けてる?」

で、次に宮石。

「鬼に捕まったらバナナに変身して、味方にタッチされたら2回に分けてぺろーんって剥けるんだよ?」

吹きだす竹崎に伊織が軽蔑の視線を送る中、擬音の入り交じった宮石の"バナナ鬼"解説が始まった。
端的にいえば、鬼ごっこだな。

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