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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

その後、男女別れてタクシーに乗り、次のポイントの水族館を目指す。

「伊織、平常心。あれは、事故」

タクシーの後部座席隣に乗り込んだ伊織の肩を叩く。

「速水は偉いよ。俺だったらぶん殴ってた」

男滝沢も助手席から伊織に慰めの言葉をかける。

「俺は落ち着いてるよ」

「怒りのオーラに包まれてるぞ?」

「Go now!だもんな…」

「あんのマセガキ。あと10年経ったら締め上げてやる」

比較的落ち着いた声で、毒を吐く。
頭ではわかっても心で飲み込めないかな。

「その頃には宮石と結婚して幸せ絶頂だって」

「速水花野だな」

未来の幸せを匂わされ、顔がほころぶも憂いの伊織。

「そんな先まで傍にいてくれるかどうか……俺だけ熱くなってバカみたい」

「はぁっ」と大きなため息をつく。

「あれで宮石がドキドキしてた方がショックだと思うけど?」

「そりゃね。けど、ちょっとは俺を意識してくれても…あの恋愛唐変木」

恋愛唐変木って……ぴったりかも。

「まぁ、宮石を見てたら何となくわかるよ…あの大根に反応しないんだから」

「でも、それって羨ましいとしか思えないけどね」

「だな。お前、あの宮石を独占してるんだぜ?」

「少しくらい鈍い方が可愛いじゃんか」

「いっつもラブラブだし」

「うーん」と言葉を濁す伊織の左腹部に、「この果報者が」と肘鉄を食らわした。

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