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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

館内を4人と2人に別れて回る。
4人とは伊織と宮石、竹崎、俺。
伊織が俺に気を遣ってくれたものと思われる。

宮石と竹崎が水槽に貼りついているので、少し離れて伊織と喋る。

「竹崎、おとなしいな」

「今だけだろ?つきあってもらって悪いな。でも、宮石とデートしてきていいから。俺は隙を見てヤツから逃げるから」

「竹崎1人にしたらお前、館内呼び出しくらうんじゃないか?気にするなよ。水族館じゃ、俺の存在5センチくらいだし」

館内呼び出しか…あり得るな。
5センチの存在って、卑下しすぎだろ。

「宮石って、魚が好きなの?」

さっきから食い入るように水槽を覗いている。
自分の方を向いた魚がいると、手を振ったりして。

「魚というか、海獣。アザラシとかラッコ。そしてスナメリ」

「スナメリ?」

砂の中、めり込んでる海獣?
俺はチンアナゴ風の哺乳類を思い浮かべた。

「ここにはいない。イルカみたいなやつだよ」

砂にめり込んだイルカ…とは、思わないけど。

と、突然、大きな声が館内に響いた。

「ヨーダっ!見て見てー!水の中でカピバラがウンコしたー。でっかー。ウンコ浮いてるー!」

「ゆ、由奈ちゃんっ!声っ、おっきいよっ」

宮石が竹崎の口に手を当てて封じている。

「あいつは、あれで女か?」

「館内呼び出しの方がましだったな」と半笑いの伊織の横で、俺は悪態をついた。

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