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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

夕食も入浴も済んで、消灯前。
本日の部屋はツイン。

同室の伊織は、さっきからベッドの上に胡座をかいて静かに本を読んでいる。
と、傍にあるヤツのスマホが光る。

サッと耳に当て、話しだす。
待ってたんだな。

「うん……うん、楽しかったな。おやすみ……あ、花野……好きだよ」

サラッとこいつは……。

スマホを置いた伊織は、何食わぬ顔でまた本をとる。
ふいに俺に話しかけてきた。

「俺、今が一番幸せかも」

「これからじゃなくて?」

「俺、今25とかならいいのに」

「いきなり10年後?」

「うん」

就職して宮石と早く結婚したいということかな?
でも、焦らなくても。

「心配いらないよ。お前の未来は明るい」

他人が羨むほどの可愛い彼女を手にしてるんだから。

なのにヤツは、それには答えずにカタい表情でどこか空を見つめた。

頭脳明晰、運動能力も上出来。
容姿だってまあ、いけてる部類だろ?

人づきあいも滞りなく、敵は少ないはず。

彼女持ちでやっかまれることもあるみたいだけど、本人は軽く流している。

着ている服や持ち物からすると、家に財力もありそうだし。

一体、何が不服なんだろう?

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