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僕ら× 1st.

第1章 初期状態 --Ior,Shu

「夢に出てくる?」

「……」

答えるかわりに、首まで真っ赤になってカタまる伊織。
ここまでわかりやすい伊織には、滅多にお目にかかれない。

「もう、溺れちゃったら?沈みそうなら俺が浮き輪投げてやるよ?我慢すんな?」

いきなりスクっと立ちあがり、ブラインドをわずかにめくり、外を覗く。
しばらく窓の向こう見つめたあと、口を開いた。

「まだダメ」

赤さは残るものの真顔を取り戻した伊織は、再び腰をおろしてチェック作業に取りかかる。

「なぁ、つきあわなくてもいいから、気持ちは打ちあけたほうがいいぞ?お前の彼女、モテねぇの?」

「ぷっ。ひっどい聞きかた。どっちかっていうとモテるよ。かっわいいもん!」

ま、会ってみなきゃ、伊織だけにモテるのかどうかがわからないけどな。

「じゃ、心配だろ?他の男に取られるかもって」

「それはあるけど、今のところ僕が一番仲良いし」

「そんな自信あるんだったら告れって」

「まだつきあえないって言っただろ?
それに、フラレてみろ!仲の良い男友だちから、一気に枠外追放だろ?」

「面倒なヤツだな、お前は。好意を寄せられてから好きになることなんてザラだぞ?
それに、お前は他人の心、読むの得意じゃねぇか」

「女のコは読みにくいんだよ。
さらに彼女となると、どうしても自分の期待と憂心が入ってしまって、もう見わけがつかなくなる」

ここぞの恋愛には向かないのか、使えねぇセンサーだな。

「きっと、きっと待っててくれるって思うんだ。あと5~6年、フリーでいてくれれば。
もし男ができても、大人になったら力づくでも奪いとる気でいるから」

「男ができてもって、処女じゃなくてもいいの?」

「…それは愚問だろ?」

伊織は眉根にシワを寄せて、俺をにらんだ。

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