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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

***

翌日は旅行最終日で、クラス毎の行動。
牧場でバードコールを作った後、ついでに世界的に有名な歴史建造物の見学。

きっと、康史はカメラから手を離さないだろうな。
あーあ、花野と入れ替わりたい!

由奈はヨーダをつついてるし。
じゃ、私は仕方なく速水をつつくか。

1人、細かな彫刻を見上げる速水に声をかける。

「昨夜、何で来なかったのよ?いくじなし!」

花野が、なかなかラインを読まなかったせいだろうけどね。

「お前はどこにいたんだ?」

私をチラッと見るも、すぐにまた見上げる。
これの何が面白いのだろう。

「ショコラの部屋!康史もいたから気にせず来ればよかったのに」

「は?滝沢いたの?あの電話の時」

彫刻の観察を止めて、私に嫌そうな顔を向ける。

「いたよ?"花野…好きだよ"」

笑いながら速水の顔を覗く。

「……滝沢いつまでいたんだよ?」

「ちっ、聞かれたか」とそっぽを向く。
一応、照れてるんだな。

「大丈夫よ。あの後、すぐに帰ったから」

安心しなよ。
花野の寝顔は見られてない。
てか、私が撮影したけど?
いつか速水の何かと交換するために。
速水が拝めるのは、当分先でしょうから。

「花野から何を聞き出したの?」

「別にぃ。花野、真っ赤になって布団に突っ伏して喜んでたよ?」

「何で?」

「あんたが"好きだよ"なんて言うからよ」

「へぇっ……」

「それでね、私が"速水のこと、すっごく好きなのねぇ"って言ったらさ。"やだ、ホントのこと言わないでっ!"ってどうよ?」

うっわ。
すっごく嬉しそうな顔しちゃって。

でも、私と康史よりつきあいは長いくせに、この初々しさは何なの?
まるでつきあう前のトキメキ状態のよう。

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