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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

慌てて速水を追いかける。

もうっ、あいつ全然私のこと考慮してない。
大股で進むから、私は小走りになる。

紫陽花が咲き誇るインクラインに踏み出したところで、ポツポツと雨が降ってきた。

「ねぇっ、速水!傘持ってる?」

そう呼び掛けると、速水は足を止めて振り返る。

「これくらいの雨、どってことないだろ?」

「うーわ。あんたの方がよっぽど鬼畜。可愛い女子の下着が透けるのをそんなに見たいの?」

速水は酷く嫌そうな顔をしながらリュックを下ろし、折り畳み傘を私に投げて寄越した。

ふふん。
用意がいいわね。
傘を開いて頭上を被う。

「あんたも入ったら?」

「お前と傘に入るくらいなら濡れる方を選ぶ」

あー、そうですか。
どしゃ降りになったって返さないわよ?

そう思って足元をとられないように歩いていたけれど、本格的に雨が降りだし、流石の私も心配になってくる。

ここは、嫌々ながら速水に傘を託そうかと迷っていると、雨音に混じって人の声がザワザワと聞こえてきた。

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