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僕ら× 1st.

第1章 初期状態 --Ior,Shu

「それでさ、これもいまさらなんだけど。お前、こんな作業は自分の部屋でできるんじゃね?PCあるだろ?」

PC1台あれば簡単にできる作業なのに。
あえて俺の横でしなくても…。
だから、からかわれるってわかってんだろ?

「僕、恋話できる友だちなんていないからさ。誰かに彼女のこと話したかったんだ」

さも嬉しそうに伊織は語る。

「友だちってお前いるだろ?」

お前のクラスの前を通ったときに、同級生に囲まれて談笑してたの見たことあるぞ?

「僕が彼女のこと話したら嫉妬されるから。ホント彼女、男子に人気あるんだ。彼女と仲が良いから僕に近づいてくる野郎もいるし」

信用できる友だちはいないってことか?
"1"と"100"は似ていても、"0"と"1"は全然違う。
ま、これはアルがよく言ってるセリフなんだけど。

「いつでも聞いてやるよ」

「ありがとう。僕ね、柊兄と彼女の話ができてすごく嬉しかったよ」

立ちまわりのうまい可愛い弟。
学校では、使わなくてもいい気を遣ってるんだな……。

シャットダウン後、俺たちはそれぞれの個室に戻った。
時計は22時、あれから30分も経っていないなんて…。
伊織の器用さに感心するとともに、不器用さを見つけた夜だった。

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