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僕ら× 1st.

第11章 サマサイド --Ior,Thk

「さーて、花野ちゃん?」

小津が立ち上がり、花野を誘う。

「わかったわよぅ。恥ずかしいから、伊織君あっち向いてて」

僕の反対側を向いて、チャックを下ろしだす。

「滝沢もこっち」

見ようとする滝沢を引っ張ろうとするが、「俺は指名されてないし」とか言う。

「パッと脱いじゃいなさい。ほーら、いいコだからね?わあ、美味しそうっ!」

そんなことをしているうちに、小津が花野のラッシュガードを肩から剥ぎ取るから、僕は目が離せなくなるんだ。

細くて滑らかな肩、背中、腰……。

「やっだ、マコは。棒読みでそんなこと言う?」

「伊織君、どーぞ。食べて?」

くるっと花野を半回転させ、僕の正面に……。
"違う、速水"といういつもの台詞も言えずに固まった僕に、「泳いでくる」と2人は言い残す。

「…TTX(猛毒)含有、花野ちゃん1匹」

言葉を紡ぎだせない僕に、何か言わなきゃと思ったのだろう。
自信なさげな表情で言うもんだから、苦笑せざるを得なくなる。

痺れかけた脳が少しずつ動き出す。

「危険なほど、うまそうだな」

チロッと舌を出しておどける僕。

「麻痺させちゃうゾ」

僕の真似をしてニシッと笑う。

「うん、痺れた。キスで治して?」

軽くキスを迫ってみる。

「全然軽症!」

この熱に浮かされた状態が軽症だって?…もう。

「花野……ホントすっごく似合ってるよ」

嬉しそうにはにかんだ花野は、「ありがとう」とポソッと言った。

「スライダー行こうよ」

僕が誘うと、後ろからトタトタとついてくる。
ビキニ花野が可愛くないわけがなく、自分に課した不可侵条約をすぐに破りたくなる。

中学を卒業したら、その日に伝えよう。

重病におかされた奥底で自分が叫ぶのを聞いた。

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