
僕ら× 1st.
第11章 サマサイド --Ior,Thk
***
8月半ばの日曜日。
少し早めに家を出たので、西回りに寄り道して公園内の木陰を経由する。
脇の幹数本には蝉の抜け殻がしがみついており、見下ろした地面には直径10ミリ程の穴が開いていた。
昔は、帆澄兄と"空蝉の術"とか言いながら忍者ごっこをして遊んだよなぁ。
それでも、静かだな。
雨が降るか…。
僕は流れの速いグレーな曇り空を仰いだ。
学校に到着して会場に向かっていると、後ろからタッタッと足音が聞こえる。
振り返ると、花野が走り込んできて僕の手前でこけそうになる。
慌てて受け止めると、息を切らしながら「ありがとう」と笑った。
「ステージでこけないでよ?」
と、抱き起こした花野の全身に目をやる。
打ち合わせ通り、ウエストに細いリボンのついた瑠璃色のシャツワンピ。
僕も同色のTシャツ。
羽賀もなんだけど、オソロに何だか気恥ずかしい。
「わぁ、伊織君。その色、似合うね!」
「花野もとても可愛いよ」
もう何度も言っているのに僕がそう言うと、嬉し恥ずかしそうに少しうつむく。
「ありがとう」
僕をチラッと見ながら、口を小さめに開いて礼を述べる。
「ふふ。可愛い」
もう一度言うと、キョロっと周りを見たり、頬に手を当てたりして、あたふたと戸惑いだす。
その反応がまた一段と僕を上気させる。
「ふふふ。さ、行くよ」
花野の肩を軽く抱き、目的地を目指した。
8月半ばの日曜日。
少し早めに家を出たので、西回りに寄り道して公園内の木陰を経由する。
脇の幹数本には蝉の抜け殻がしがみついており、見下ろした地面には直径10ミリ程の穴が開いていた。
昔は、帆澄兄と"空蝉の術"とか言いながら忍者ごっこをして遊んだよなぁ。
それでも、静かだな。
雨が降るか…。
僕は流れの速いグレーな曇り空を仰いだ。
学校に到着して会場に向かっていると、後ろからタッタッと足音が聞こえる。
振り返ると、花野が走り込んできて僕の手前でこけそうになる。
慌てて受け止めると、息を切らしながら「ありがとう」と笑った。
「ステージでこけないでよ?」
と、抱き起こした花野の全身に目をやる。
打ち合わせ通り、ウエストに細いリボンのついた瑠璃色のシャツワンピ。
僕も同色のTシャツ。
羽賀もなんだけど、オソロに何だか気恥ずかしい。
「わぁ、伊織君。その色、似合うね!」
「花野もとても可愛いよ」
もう何度も言っているのに僕がそう言うと、嬉し恥ずかしそうに少しうつむく。
「ありがとう」
僕をチラッと見ながら、口を小さめに開いて礼を述べる。
「ふふ。可愛い」
もう一度言うと、キョロっと周りを見たり、頬に手を当てたりして、あたふたと戸惑いだす。
その反応がまた一段と僕を上気させる。
「ふふふ。さ、行くよ」
花野の肩を軽く抱き、目的地を目指した。
