テキストサイズ

僕ら× 1st.

第11章 サマサイド --Ior,Thk

「かー、やってらんね。あんたら、うちのこと忘れんといてね?」

飾らない2人に、新しいクラスメイトの前では出せなかった素の自分が、じゃんじゃか出てくる。

「桃湖の言葉って可愛いね」

速水のキスをかわして花野が私に目を向ける。

「おっさんだろ?」

会話の芯を取られた速水は、やや不機嫌にそっけない。
そんな速水にそっと笑って見せた花野は、そのあとすぐに私に尋ねてきた。

「ね、"うちのこと忘れんといて"って言うの?」

「発音が違うよ。"うちのこと忘れんといて"」

「ね、可愛い!言われたくない?」

「そんな別れの言葉、言われたくないね」

未だ花野を抱き締める腕をゆるめない速水は、軽く首を横に振る。

「forget me not……せつないですぅ」

頬に手を当てて目をつぶる花野を見ながら、速水が呟く。

「勿忘草か。O.Yでそんな曲があったな」

「え?歌って歌って!」

自分の手をマイクに見立てて、花野がせがむと、速水はそのグーを手で包んでこう言った。

「いいけど…この曲歌ったら僕、花野に口づけしたくなるよ?覚悟は?」

は?そんなこと言う?

「ええっ?そんな曲なの?」

この男は、ここで歌いたくないからそんなこと言うん?

「どうする?唇にキスしていい?」

戸惑いの花野を見つめて口を尖らせるバカに、フツフツと怒りが沸いてくる。

「てめぇら、イチャイチャすんじゃねぇっ!」

そんな苦笑いの気を遣わない日々があっという間に過ぎていく。

5月中旬、顧問の提案でサマフェスに参加できることになった。
入部後3か月で晴れ舞台なんて超ラッキー!

ストーリーメニュー

TOPTOPへ