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僕ら× 1st.

第11章 サマサイド --Ior,Thk

***

当日朝に、前を行くあの人形カップルを見つける。

「こら、そこのラブラブな2人!」

「あ、桃湖。おはよー」

花野は振り向いてニコッと挨拶してくる。
その横の速水は「よぉ」と小さな笑顔を傾けた。

「何?あんたら、まさか朝帰りじゃないでしょね?」

「朝?まだ帰らないよ?」

出た…花野の天然返し。
調子のいい速水はご機嫌で相づち。

「だよねー。今日は夜もずっと一緒」

夜もずっと一緒って、コンサートが終わってから?
いくら双方親がいないからって、もうっ。

「へぇぇっ。それはお盛んで」

私の皮肉をものともしない速水は、目を細めて顎を上げながら尋ねてきた。

「あんた、何でTシャツ?」

打ち合わせでは、私はタイトなドレスを着る予定やったから。

「何か似合わなくてー」

お尻がパッツンパッツンでとは流石に言いにくくて言葉を濁す。

「Tシャツより似合ってるよ」

今着てるTシャツが似合わないっちゅーんか?このクソガキは!

「見てないでしょ!」

「わかりますよ。大人の羽賀さんにはお似合いです」

「持ってきてるなら着替えろよ」とつけ足してくる。

「あんたは私と同じなのが嫌なだけでしょ?」

「ビンゴ」

"ビンゴ"じゃねぇよ。
私はあんたより年上やぞ?

その横で、自分ひとりワンピの花野が寂しそうに呟く。

「私もTシャツのほうがいいのかな…」

「花野はそれがいいよ。めっちゃ可愛い」

速水は花野の頭にキスをして、そう言った。

「ワンピースは脱がせやすいものね」

私がそう言うと、速水はこう吐き捨てる。

「ホントあんた、中身おっさん」

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