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僕ら× 1st.

第11章 サマサイド --Ior,Thk

そこに顧問が現れる。

「おい、お前ら。リハ始まるから、待機しとけ…速水。お前、筋肉あるな…似合うじゃん」

「何を今更。まあ、ありがと」

よね。
こいつ、何気にいい身体。

…根岸は、やっぱひょろい。

「はーい。花野、行こ」

花野の手を引いて歩きだす。

「うん。伊織君も」

花野が速水の手を取り…3人でって、何の仲良しこよしよ……。

「おい、羽賀。前」

2人に気を取られていた私は、危うく照明準備の脚立にぶつかりそうになる。

「あんたも、ええとこあるやん」

私が止まったので、勢い転びそうになった花野は速水に抱きかかえられる。

「だよなー。こいつ、荒っぽいのは口だけでイイヤツ」

速水に「抱きつくな」と注意しながら根岸は言う。

「支えただけだろ?それに、口も上品ですよ」

とか言って花野には、「危険だからこいつと手を繋ぐな」とかおっしゃる。

「あんた、年上の私に"お前"とか"どアホ"とか言うじゃない。今も"こいつ"って、聞こえてんだからね?」

「あ、俺も言われたよ。"どアホ"」

「先生にも?」

「そんなの覚えてても得はないよ?」

"いけしゃあしゃあ"とはこの男のためにある言葉やないか?

「憎ったらしい。ね、花野。こんなののどこがいいの?」

「えー?伊織君は優しいよ?言葉だって、多少荒いほうが男のコっぽいし。ちょっとキツイ時があるかもしれないけど、本気で言ってないから」

本気か本気やないかは問題やないと思うのよね。
こいつには目上に対するリスペクトが足りひんのよ。

ステージに辿り着き、各持ち場に回る。

ドラムを前にすると人を食ったイタズラ坊主は影を潜め、鋭い目つきに変わる。
まあ、カッコいいとは思うけど、ガキはガキ。

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