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僕ら× 1st.

第11章 サマサイド --Ior,Thk

速水から不評のカレーは飛ぶように売れた。

交替のコが1人やって来たので入れかわった私は、速水たちのテーブルにかけて食後のイチゴラッシーを飲む。
「これ、カレーとの相性サイコー」と舌鼓を打つも、2人は「口直し」と言ってコーヒーを傾ける。

そして、さっきからずっとその行列を複雑な表情で見つめている。

「空腹は最高のスパイスってな」

「宮石の招き猫パワーだよ」

「怖いもの知らずって多いんだな」

「あの笑顔が自分に向けられるなら、1食くらい胃を犠牲にしてもいいんだよ。ほら、野郎ばっか並んでる」

まぁ、それは私も感じるけど。

と、おかわりのカップに花野が注ぎ、「どうぞ」と差し出した手が、その男に包まれる。

頬杖をついていた速水が、顔をあげて警戒する。

「あいつ今、花野の手を触った…」

「わざとだろうけど、許してやれよ。あんなのトーマ君に比べたら何でもないだろ?」

トーマ君?

「うわ、思い出したくもないことを」

「ははっ。じゃ、俺そろそろ部活に戻るな。お前らの出番、16時過ぎだろ?」

と、晄志がグラウンドに戻っていったので速水に尋ねてみる。

「トーマ君って誰?」

「人の会話、聞いてんなよ」

口の端をヒクっとさせて速水が言う。

「あんたら、私の目の前で喋ってたじゃない!」

聞いてしまった以上は気になるじゃない!

「あ、いたの」

「はぁっ?」

トーマ君は過去のライバルか?
腹立つから聞くのやめよ。

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