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僕ら× 1st.

第11章 サマサイド --Ior,Thk

そろそろ時間。

地面に所々水溜まりがある中でも、予想外に観客が多くて脚が震える。
エプロン着用を諦め、舞台裏で目をつぶってゆっくり深呼吸、精神統一していると。

突然「桃湖~!どーんっ」と花野が抱きついてくる。

「よし、パワーチャージっ」

グッと気合いが入ったみたいで拳を握る。

「僕もチャージ」

と花野の頬にキスをしてから、自分にもしてくれと身をかがめて頬を出す。
花野が困ったようにキスをすると、速水はぎゅーっと抱き締め始める。

「あんたら、ステージでそんなことしないでよね?」

「もうっ、伊織君たらっ。…桃湖もほっぺチューしてほしい?」

速水の腕の中で、照れた花野が唇に指を当てて私を見る。

「ダメだよ。僕以外の人間にしちゃ」

花野におでこを合わせて速水がたしなめる。

このっ、うっとうしい幸せカップルが!

おかげで緊張してるのがアホらしくなったやん。

合図とともに「お先にっ」と2人は袖を飛び出していく。
拍手が聞こえてくる。

もう、やるしかない。
一呼吸置いて、私もステージへ入っていった。

私には心強い2人の味方がついている。
大丈夫。
3人の音楽を楽しんでもらおう。

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